店長と長文の送り合いの話
ある程度の年齢になると、素直ではなくなる。
じぶんを構成するパーツががちがちに固まってしまって、もう身動きがとれなくなってしまっている。
だからたとえば、お互いの主張がぶつかり合ったとき、どちらも譲らないということがおこるのだ。
うちのバイト先の店長が、グループラインでねちねちと言う人で、ぼくはそれがイヤでたまらない。
「絶対にしないでいただきたいです」
とか、言えばみんなしなくなるのだろうか。
いるかどうかもわからない犯人を探して、やったかどうかもわからないことにやめろとクギをさして。
なんか、毎回毎回、店長の長文ラインで空気悪くなってるなあと思っていて、1月に店長が辞めるとはわかっていたけれど、イヤだなあと思ったので、個人ラインで話をすることにした。
限りなく店長を尊重した上で、グループラインでの長文のときの言い回しなど、ぼくが個人的にイヤだなあというところに関して意見を述べた。
と言っても、これはもうぼくの主観でしかないので、実際はめちゃめちゃ横暴で店長を逆なでするような文だったのかもしれない。
「勝手に決めつけないでいただきたい」
とか店長は返事してきた。
これもまた、この文だけを切りとるのはあまりよくないのだけれど、店長から送られてきた長文をぜんぶ載せるわけにもいかないので、申し訳ないけれど、ぼくの主観が多く入っていることや、部分的なものでしかないことを考慮してみていただければ幸いだ。
ぼくは打ちひしがれた。もう何を言っても意味はなくて、店長はきっと変わることはないだろうと思った。
でも、イヤだなあと思った。言葉を尽くして、尽くして尽くして、最後の最後に、相手が逃げてしまって初めて、諦めていいのだと、ぼくは思っている。
考えを押しつけたいわけでも、価値観を変えたいわけでもない。ただ、違う価値観があることを理解した上で、お互いが尊重できるような着地点を探して、好きあえたらいいなあと思う。
一度怒りながら長文を打って、送ろうか迷ったあげく、
「いろいろ言いたいことあるので長文で送ろうと思いましたが、今度直接会ったときに言いたいことあったら話しまーす。」
とぼくは言った。
そうしたら、店長からまたたくさんの長文ラインがきて、やっぱり改めて、長文を書いて送ろうとぼくは思った。
以下がその文の、終わりの方である。
だからもし店長が間に挟まれて苦しんでいるのであれば、ぼくらに相談してほしいです。
ぼくらが正しいわけではありません。むしろ、経験なんて店長に比べたらまったくないし、言ってることは青臭いかもしれません。
ただ、ぼくらは他のスタッフ、そして色々突っ込んでくるマネージャーのことを、たぶん店長や他の社員さんよりも知っています。
だから、ぼくらにもぼくらの感じ方があること。
その中で、ぼくを含めて少なくない人たちが、違和感をおぼえていることを理解した上で、すべてのスタッフに配慮していただければぼくはとてもうれしいです。
モチベーション落としているのはぼくではありません。
ぼくはむしろ燃えています。
今のギスギスしてるお店を、じぶんが、周りのスタッフと協力して、どうポジティブに変えていけるのか。
新人も含めて、なんかこのお店怖いなあと漠然と考えているスタッフに対して、大変そうだけど、求められるレベルは高いけれど、でもお店のために、お客さんのために、他のスタッフのために、がんばってもっともっと良くしていきたいなあと思ってもらえるようなお店にします。
その中で店長のやり方が違うと思えば、ぼくはたとえ店長が1月に辞めるのだとしても、きちんと言葉を尽くしたいです。
ただ、長文で、ここが不満だ、とか、ここを変えろ、とあまり言っても、結局誰に対しても響かないんだろなあっと思ったので、また直接、時間があれば言わせてください。
店長の返事って、結構ぼくの中でムカつくことが多くて、全然伝わってねえな、と思うことが今まで多かったです。
ただ、長くはありませんが、一緒に色々話して、意外とと言えばとても失礼ですが、すごく深く、ぼくらの言葉を、店長は考えて考えて、心にしまってくれているんだなあと最近強く思うようになりました。
なので、めんどくさいからもう伝えなくていいやと思ってましたが、きちんと伝えたいと思います。
これからもよろしくお願いします。
香ばしいまでのイキリ尽くしで、こんなのバイトに言われたら、ドン引きするだろうなあとぼくは思う。
じぶんが何者かわからなくなる。
一つたしかなのは、イキり尽くしているやばいやつということだけ。
それもまた面白いなあと勝手に思っていて、だからぼくはイキりをやめられないでいる。
この長文にたいして、また店長も長文を送ってきたのだけれど、その最後らへんで、
「全員の価値観と合わせられるような人にぼくはなりたいとは思いもしないしね。そんな人見たことないし。」
と言っていて、なるほどなあと思った。
ぼくは、全員の価値観と合わせられるような人になりたい。
だから誰にたいしても、諦めたくない。
それがぼくと店長の根本的な違いで、だからなんだか、ずっともやもやするなあ、気持ち悪いなあと思っていたのだ。
長文の送り合いだけれど、話せてよかったあと思う。
今度はきっと、おいしいご飯を食べながら、目と目を合わせて話せたら、とてもよいなと思った。
次回はこのバイト先の、神の新人について話します。お楽しみに!