ビビらせたい願望の話
昔からぼくは手品が大好きだった。
驚かされること。どきどきすることが好きで、いろんな人をビビらせて、あいつはやばいやつだ、と言われたがっている。
恐怖とか、喜びとか、尊敬とかでもなく、純粋な驚き。好きや嫌いよりも先に、ただ驚いてほしい。
だからぼくは、人と違うことをしようとするのかもしれない。
誰かがやっているには違いないのだから、人と違うこととは言えないかもしれないけれど、もっときちんと言うならば、一人の人と違うことをしようとしているのだろう。
いろんな人に会って、こんな生き方あるんだあっていうのを知って、じぶんで体験してみて、一人の人では経験できないくらいのたくさんのことを、経験したいなあと思っている。
きっと、その道何十年とやってこないと見えてこないこともいっぱいあるだろう。
誰かの人生をちょっとつまみ食いしたくらいで、あぁ、この程度かと思いあがるほどじぶんは子どもではないと思っているし、きっとぼくが考えるよりも、どんな世界ももっともっと奥深いのだろうなあと思う。
ぼくはのめり込んでしまいそうになる。奥まで続く真っ暗闇に、どきどきして、この先に見える景色はきっと、とてもビビるし、ビビらせられるものなのだろうと思う。
若さゆえに、上しか見えていない。
どんな世界にも、うまくいかなかった人、挫折した人はたくさんいる。むしろそういった人たちの方が多数派だろう。
ぼくだって、たくさんの失敗をしてきた。
ぼくにとって一番大切なはずの、人。
人さえいれば、ぼくはそれだけでいいのに。
たくさんの人の信頼を失って、傷つけて、いなくなってしまった。
でも、だからこそ、もう失敗しないために、がんばりたいと思う。もっともっと向き合って、よりよくなるために努力しようと思えている。
それが理由になるかはわからないけれど。
だからぼくは、どこでも生きていけると思っている。どんな世界にいたとしても、そこで、上を見て歩んでいけるのではないかなあと思う。
もっともっとビビるものを探して、
「あいつそんなことやってんのかよ!」
と周りの人がビビってくれたらいいなあと思う。
大学を卒業して、就職せずに海外に行くのも、そのビビらせたい願望が理由の一つだ。
海外に行く人はたくさんいるかもしれない。だから行った先で、
「なんだあいつ!」
って思われるくらいの、面白いことをやるつもりなので、楽しみにしていてほしい。