プラネタリウムと東京の夜空の話
昨日、やまは(仮名)とプラネタリウムにいった。
池袋の、コニカミノルタプラネタリウム、満天というやつで、めちゃめちゃきれいだった。
「TOKYO MIDNIGHT GROOVE」のプログラムは、東京の夜景や星空をテーマにしていて、ずっと東京で生まれ育った身としては、考えさせられるものがある。
東京の夜は、明るすぎて、空を見上げても星は見えない。
そもそも、せわしないこの場所で、顔をあげて空を見る人なんて、いないのだ。
グルーブ感のある音楽がドコドコと流れながら、東京の夜や星の話を男女がしている。
プラネタリウム内はとても暖かくて、リラックスしきっていて、ぼくとやまははすでにお酒を二杯飲んでいたのでほろよいで、ふと眠りそうになる。
ぼくは中学2年生のときのことを思い出していた。
夜に、女の子と電話をするために家を抜けて、屋上へと階段をのぼる。
周りは意外と暗くて、月も出ていなくて、だから、なんだかとても、しんとしていた。
こんなに深い夜を、ぼくは今まで知らなかった。
少し、こわくなる。
今はひとりぼっちなのだと急に気づいて、どきどきしてくる。
電話が鳴った。
もしもし。
「あ、」
もしもし、きこえてる?
「うん、ごめん」
なんで謝るの。
と言って彼女は笑った。
「ごめん」
とぼくが言う。
すごくドキドキしていた。女の子と夜に電話をする、というのがたぶん初めてで、緊張していて、さっきの静まりかえった夜のドキドキを、簡単に上書きしてしまう。
話している途中で、ぼくは顔をあげた。そうすると夜空はとてもきれいで、星がよく見えた。
「星がさ」
うん。
「すごいきれい」
本当に、とてもきれいだった。東京でこんなに美しく、星が見えるとは思わなかった。
深くておそろしいと思っていた夜が、とたんにとても安心できるものになった気がした。
「星がきれい」って言ってから、ぼくは急に、とても恥ずかしくなった。じぶんの言った言葉が、とてもキザに思われたからだ。星がきれいってなんだ。
彼女がどんな言葉をかえしてくれたのか、今となっては思い出せない。
そんなことを、プラネタリウムを見て思い出した。
やまはって、やっぱり面白い。
きっと彼女は、面白いかどうかを基準にして行動しているのだと思った。
だから結局、行動できるのだと思った。やるかやらないかで言えば、やった方が面白いには違いない。
やまはの生き方は、とても面白い。きっとこれからも、彼女は行動し続けるのだろう。
プラネタリウムみたいに、鮮やかにかわって、さまざまな景色を見せてくれる。
そんなやまはを、これからも見ていたいなあと思った。
プラネタリウムの星空をみる彼女の横顔は、とてもきれいだった。