悪いクセは全部なおやという話

 

何をもってして悪友というのかはわからないけれど、あえて使わせてもらうと、なおや(仮名)は一番の悪友だ。

 

交際して身のためにならない友だちのことを悪友と言うらしかった。

たしかに、なおやとぼくは、高校1年生に出会ったころから、お互いを低め合う仲である。

高校のころはほぼ毎日一緒にいたし、朝から夕方までカラオケにいたし、夜遅くまでサイゼで話していた。

 

高校を卒業してからも、月に一回くらいは会っていて、お互いの近況を話しながら飲んだりしていたのだけれど、ちょうどここ3ヶ月くらい、なおやとは会っていなかった。

ぼくは会いたかったので、週に一回以上はなおやに連絡をしていたのだけれど、ほぼ全部無視されて、ようやく昨日会えたのだった。

彼に連絡を無視されすぎて、ぼくはマメになってしまった。返事がこないときの気持ちが、痛いほどよくわかるから。

そんなこんなで久しぶりに会ったのだけれど、なおやはもちろん、何も変わってなかった。

 

例えばだけれど、間接照明を買った話をぼくがする。なおやはそんなどうでもいい話もきいてくれて、ぼくが写真をみせると身を乗り出して見てくれる。めちゃくちゃつまらない話なのに、きいて、一周回って面白がってくれる。

だからぼくは、たくさんしゃべってしまう。

なおやはとにかく笑うし、なんでも面白がってくれるから。

そのせいで、なおやではない人にも、ぼくは結構どうでもいい話をする。かなり、話されても意味のない話をする。そうすると当たり前なのだけれど、どうでもいいって顔をされて、ぼくはふと思い出す。

あ、しまった、なおやじゃないわ。と。

 

どうでもいい話をしすぎてしまうのは、ぼくの悪いクセだ。全部、なおやのせい。

 

基本的に、なおやはアルコールハラスメントをしてくる。

なおやというのは、怒りの感情の壊れた、つねに笑みを浮かべるようプログラミングされた、お酒を燃料にした、そんなロボットなのだけれど、唯一怒るときがある。

それはぼくがお酒を飲まないときだ。

「おれのついだ酒が飲めないの?」

とか言ってきて、まあぼくは飲まないのだけれど。お酒をいっぱい飲んだやつがえらい、みたいな、ロボット特有の文化を押しつけてくる。

しかも、飲むペースもとても早い。

ぼくは一緒に飲んでいる人とペースを合わせてしまうクセがあって、それもたぶん、全部なおやのせいだ。

 

ぼくに何か悪いクセがあったら、ぜひ指摘してほしい。だってきっと、それは全部なおやだから。