面接の心構えの話
ニューヨークに留学をしてるこうたろう(仮名)から急に電話がかかってきて、「自己PRってどうやって書けばいいの?」ときかれた。
ろくに就活をしなかったぼくによくそんなことをきくなあと思いながら、考えた。
こうたろうの良いところってどこだろう? うーん。……優しい? 一番無難なやつしか出てこなかった。
自己PRを書くときに気をつけなければならないことは、提出する企業に合ったアピールをすること。その企業が求めている人材に合ったPRでないと、あなたはうちの会社には合わないですね、となるだけだ。
当たり前のことに思えるけれど、自己PRをどの企業にも使い回す人は意外といる。
なんでこの会社に応募するのか?
会社とじぶんがどう一致しているのか、じぶんが会社に入ったときの未来像を思い浮かべられているかが、自己PRを書く段階から重要になってくる。
練習のために興味のない企業に応募する人もいるけれど、ぼくはそれはとてもとても無駄だと思う。少しでも好きなところを見つけて、ここ愛せるな〜ってポイントが一つだけでもあるのなら、それをきっかけにもっと良いところを見つけられることもあるので、無駄ではないけれど、好きなところを見つけようともしない人もいる。
結局、口説くことと一緒なのだとぼくは思っている。
ありのままのじぶんをみてほしい。
だからといって、家でごろごろしてるところだけ見せても好かれることはない。ありのままのじぶんは、努力しないじぶんでもないし、かっこつけないじぶんでもない。
それは怠慢だと、ぼくは思う。
嘘を吐くわけではないけれど、ちょっと背伸びする。いつも行かないおしゃれなレストランに行ったり、かっこつけたり、そういうのと同じように、面接では口説こうとするべきだ。
あなたのことが好きです、こことこことここが好き。そしてぼくにはこんな魅力があります、と、面接では実際に見せることはできないから、エピソードで話すことで説得力を演出する。
こいつ全然魅力感じないけど、練習がてら声かけてデートしてみるか。
これは最低である。相手に対してとてもとても失礼だし、そんな人の気持ちを踏みにじるようなやつに魅力があるとは思えない。だから、企業も一人の人であると思って、接してほしいなあとぼくは思っている。
嘘吐いてもしかたないし、面接の練習をしたいなら友だちとロールプレイした方がよっぽどいい。
こうたろうにはそんなことを伝えたのだけれど、結局自己PRはどうやって書けばいいのかは言えなかった。
あいつの良いところ、
優しいところ、
怒りを知らないところ、
人のこと大好きなところ、
人間関係が広がっていくことに喜びを感じられるところ、
誠実であろうとするところ、女の子に振り回されているところ、
ぜんぶとても好きだ。
こうたろうにだったら、背中を預けて信頼することができると、心から思う。
ただ、あいつがてきぱきと働いている姿は想像ができないし、きっとじわじわと悩みながら、特に人の心に振り回されながら、あいつらしく生きていくのだろう。
そう思うと、なんだか可笑しかった。