悪口みたいなものじゃない
最近、友達と二人で話すときに、
「あいつはこういう人間だ」
と言い切ってしまうことがよくある。
悪口のつもりはないのだけれど、勝手にその人を分析して、知ったような口をきいて、こんな人間なのだろうなあ、と言ってしまっている。
「あいつはずっと前から全然変わってない、家にいて、テキトーに文句言って過ごして、そのままダラダラ30歳になるんだろうなあ」
「お前あいつに失望してるんじゃん笑」
「うーん、もっと面白いやつだと思ってた」
とか。
「モテるのとかどうでもよくなったからあんな太ったのかな」
「もう今の状況で満足してるんだろうね」
とか。
「いい人だし、めちゃめちゃ優しいし、すごい親切心でやってくれるのはわかるんだけど」
「親切だと思ってやってることがあまり嬉しくないことをわからずに、良いことをしてると思ってゴリ押してくるタイプの人間だよね」
とか。
当の本人にきかれたら角が立つものばかり。
じぶんは何様なのだろうか、と思うことがある。
いや、言っているのは誰でもなくぼく自身なのだけれど。
勝手に期待して、勝手に失望して、勝手に知った気になって。
あいつはこういう人間なんだ、って決めつけている。
言うなら本人に言えよって感じだけれど、本人に言えないのなら誰にも言うなよって感じ。
じぶんで言って、じぶんでちょっと自己嫌悪して具合が悪くなっているのって、ぼくはばかすぎるな。
なんでちょっと気持ち悪くなるのかなあって思って、時間をとって考えてみて、結論にいたった。
二人で会話して、その中で他者を分析しているのだけれど、この好き勝手話している二人同士が、お互いの分析、本音を話しきっていないから具合が悪いのかもしれない。
ぼくが敬愛してやまないけいのさん(仮名)はその点、ずばっと目の前の人をどう思っているのかを、一見乱暴でいて、実は丁寧な言葉で表してくれる。
ただ、彼女は例えば黄色と赤色を同じ色だと言ってしまうみたいに、言葉を雑に使うところがある。
同じ色じゃないです、黄色は止まれるなら止まれ。赤色は絶対に止まらなきゃいけません。
けいのさんは以前、あおた(仮名)が言っていた、たけうちくんの恋愛語りをきくのは「時間がもったいない」というセリフを、たけうちくんの恋愛語りをきくのは「無駄」って言ってたよ、とぼくに伝えてきたことがある。
けいのさんはどっちも同じ意味じゃん、と言っていたのだけれど、だいぶニュアンス違う。
うんこ味のカレーとカレー味のうんこと同じくらい違う。うんこかカレーかって、排泄物か食べ物かってことだからね?
あおたに「無駄」と言われたのだと思って、強い言葉だから少なからず落ち込んでいたのだけれど、「時間がもったいない」と言っていたのだとわかって、それは間違いないと思ったのと同時に、ほっとした。
こういうニュアンスをけいのさんは省きがちで、それが原因で周りの人間ともめたことが何度かある、って言うとおおげさだな悪口みたいだやめとこう。
お互いの本音の部分をきちんと話せば、少しは楽になるのかもしれない。
誰かを「こういう人間なんだ」って言うのって、根本的にずるいんだ。その場にいない人のことだから、反論をさせてはくれないから。
なんだか逃げてる感じがして、いやらしい感じがして、気持ち悪くなる。
でもやっぱり、言いたくなるし、これからも言い続けるだろう。あいつはああいう人間だと思う、って。
そのずるさをやわらげるために、きちんと向き合うことが必要なのだとぼくは思った。
今目の前にいる人をどう思っているのかを、きれいごとで終わらせない言葉で伝えたい。
その人の行動や言動を、じぶんがどう捉えているのか。
じぶんの行動や言動を、その人はどう捉えているのか。
もっともっと、丁寧に、逃げずに言葉にできたらいいなあと思う。