香ることの美しさ
香りは、ぼくに思い出させてくれる。
どんな音や映像、言葉よりも鮮明に、実感をさせてくれる。
だからたまに、泣きたくなる。
この匂いを、再び感じる日は、もう来ないのかもしれない。
香水について調べていたら、面白いものを見つけた。
パフュームオイルファクトリー。
一つ一つの香りに、ささやかな物語が添えられている。
香りに意味が生まれる、それらの物語は、ゆっくりしていて、不安だったりするのだけれど、余韻はとても穏やかだ。
毎日の生活を、より華やかに、より心強く。
1日1日の幸せを願い生み出された、
31種類のオリジナルパフュームオイル。
その日の気分やシーンによって、香りをお選びください。
ぜんぶの物語をみたわけではないし、香りについてもよくわからない。
ただ、ぼくの目をひいた香りがあった。
ほのかに香る、その美しさを。ぼくはいまだに、忘れられずにいる。
あたらしいレインコートを買ってから、
ずっと、晴れの日が続いている。
鮮やかな色と、少し細身のシルエットに
一目惚れしてしまったのだ。
ラジオから流れてくる天気予報では、明日も、
明後日も、よく晴れると言っている。
自分の意思では、着れない服もある。
そんな、あたりまえの事実に
私はそっと笑みを浮かべた。
この香りの名前は、ここでは明かさない。
見つけて。
ロマンチック。