失恋した話

インターン先で出会った彼女は、人のことがたまらなく好きな子だった。いつも笑顔で、よく笑い、よく気を配る子だった。人のことがとても好きなんだなとわかるすてきな笑顔で、ぼくはたちまち好きだと思った。もちろん、人としてである。愛想のいい人は好きだった。だれかに対してどう思う気持ちよりも先に、優しくあろうとする心と、その結果からくる愛想のよさがぼくは好きだった。性格の悪さとか、何を考えていようがどうでもよかった。

一緒にいる人が楽しんでいるかな、と考えてしまうサガがぼくと似ていて、勝手に親近感を持っていた。ただ彼女には彼氏がいて、彼氏のことが大好きで、ぼくの入る隙は見当たりそうもなかった。それでもぼくは、彼女のことが大好きだった。二人で話すのはとても楽しくて、彼女がぼく以上に「人好き」であるのがわかって、とてもうれしかった。誰かが誰かのことを「好き」な話をきくのは大好きで、彼女が彼氏のことを「好き」な話をするのはとてもうれしかったが、同時にとても胸が痛かった。いわゆる「ノロケ」をきくのは嫌いではなかったが、徐々につらくなっていった。すごく好きになっていったから。人のことを想い、人のことが大好きな彼女のことが、たまらなく好きになった。考えて考えて考えて、人と向き合って結論を出そうとする彼女が、変わりたいと願い続ける彼女が、すごく好きだった。

 

ぼくはドMなのかもしれない、と思うことがある。この胸の苦しくてたまらない感情が、心地よいと感じることがあるからだ。でも、今は吐きそうでたまらない。苦しくて、悲しくてたまらない。誰かのことなんて好きにならなければよかった、と、月並みなことしか浮かばない。叫びたくて、叫んで、何も満たされなくて、ただ苦しい夜が待っている。

 

嫌ってくれればいいと思う。好きでもないぼくと一緒にいて、彼氏のノロケを話して、ぼくはずっと平気だと思っていたけれど、どうやらそこまでロボットではないらしい。すごくすてきな人と、とても大好きな人と、ただ一緒にいられればそれでいいと思っていたけれど、どうやら ぼくは、求めすぎてしまうようだ。どうしようもなくつらくて、自分の気持ちが届かないのが気持ち悪くて、勝手に人のせいにして、好きな人を傷つけて、嫌われたくて。もう、こんな気持ち、最初から持たなければよかったと女々しいことしか考えられない。

 

ただ何も考えず、一緒にいられた時間が、一番楽しかったなあと思って、ぼくは眠りにつく。一生それが続いてくれればよかったのにと、願わずにはいられない。ぼくは彼女を、すくうことができない。