人ってすごいいいなあって話

ぼくは人が好きだ。それはきっと、今まで数えきれないほどの親切、優しさに出会ってきたからだと思う。当たり前だと思っていた家族の優しさも、この年になって、すごく尊いものだと感じている。まず第一に、家族のおかげでぼくは優しさとか、人の心を大事にしようと思う心を持てた。

けれどそれだけじゃあなくて、ぼくはもっともっと優しさに触れている。小学生の頃土砂降りの雨の中、びしゃびしゃになったぼくを会社のビルに入れてくれた受付のおじさん。彼はタオルと傘を貸してくれた。まだ返していないし、お礼にだっていけてない。これもまた小学生の頃、銭湯の休憩所で兄と自販機の前で立ちつくしていたら、おじいさんがぼくの大好物のフルーツ牛乳をおごってくれた。でも本当はもう飲み終わったあとで、二杯目のフルーツ牛乳は苦しくて苦しくて、飲めないって兄に言ったら、我慢しろって言われて無理やり全部飲んだ。高校生の頃だって、ノロウィルスで突然倒れたぼくを、行き交うたくさんの人が介抱してくれて、近くにあった大学の保健室まで連れてってくれた。保健室の先生もとても優しくて、まったく無関係のぼくを手当てして、ベッドで寝かせて、家族に連絡までとってくれたのだ。

忘れてしまったものも多いかもしれないけれど、こんな優しさにぼくはたくさん触れ続けて今まで生きてきた。今も毎日毎日、ささやかな優しさを目にして、すごくうれしくなる。いいなあって思う。

 

ぼくが感じた「いいなあ」っていうぽかぽかとしたあったかな気持ちを、今までぼくのもらった優しさを、今度はぼくから誰かが受け取ってくれたらすてきだ。人に優しくできたらいいなあ。

その人のことを好きであれば、優しくすることは難しすぎることではない。ひどい言葉をつかったり、ひどいことをしたりするのは、その人のことが好きじゃないからだ。だから、もっともっと、ぼく自身も、ほかの人も、みんながみんな、人を好きになったら、すごくいいなあって思う。人がもっと人を好きになる世の中。

 

映画とか漫画とかで、たまに悪役が人気のあることがある。悪役の行為そのものは悪でしかなくて、とめなければいけないことなんだけど、その行為にいたるまでの考えとか、悩みみたいなのを知ることで、あー、憎みきれないなと思う。人も一緒なんだ。その人のことを知っていけば、嫌いな部分が見つかるのと同じくらい、好きな部分も見えてくる。どっちを見るかなんだ。

 

人が人を好きになるために、ぼくはがんばりたい。