去年ゼミ長とバチバチだった話

ゼミって、卒論を書くし、卒業に直接関係してくるから、とても大事だ。だが、ぼくの学科は、卒論を書かなくてもいい学科だった。卒論を書きたい人は英語で書かなければいけない。だから必須ではないのかもしれない。一年分の単位さえとってしまえば、4年生になってゼミをとる必要はなかった。

ぼくは3年生のころ、談話分析をするゼミに所属していた。人の会話を文字化して、間や微妙な語の強弱、イントネーションやスピードまで、こと細かに落とし込んで、読んだ人が音をきかずとも同じクオリティで頭の中で再生できるほどの情報量をつける。そこから、様々な状況、男女差、世代差、親疎などを考慮した上で、会話を分析するものだった。

ぼくはつねづね、男性と女性の違いというか、それぞれの特性みたいなのが気になっていた。だからその違いを、会話というもので分析して論じるのは、とても面白そうだと思った。

 

イキるのが大好きなぼくは、4年生の先輩もいる中で、まあイキった。ICレコーダーを使って録音して、USBでデータを共有するといった従来のやり方ではなく、スマホで録音しオンラインクラウドで共有する方法がなぜよいのかというのを、質疑応答も含めて授業時間の10分を事前に教授からいただき、ゼミ生の前でプレゼンテーションした。ラインのグループで議事録や(勝手にPDF化した)資料をのせることもした。

教授と一部の先輩からは、少々反感を買った。彼らにとっては新しすぎたのと、シェアハピが過ぎたせいだ。

ただ、同じ3年生の唯一の男子学生はイキり友だちとも言えるような関係だった。

※ここではプライバシーに考慮して、彼のことをなおと(仮名)と呼ぶ。

背中はなおとに任せていたので、こわいものはなかった。だが唯一の味方とも言えるなおとが、3年生の後期の途中で失踪した。

 

ちょうどぼくとゼミ長との確執(変なことばかりしてるぼくをゼミ長は疎ましく、教授にも軽い文句みたいなのを言っていたらしい。確執などと大げさなものは実際にはなかったのかもしれないが、3年生の中でそれは半ばネタになっていた)が、面白い方向に転がっていたところだった。ゼミ長と、問題を起こすぼくとなおとが、同じグループとなり、共同研究(というと仰々しいが、ようはゼミの集大成、グループ発表)をすることとなったのだ。ゼミ長が全権を持ってグループを作れたことを考えると、彼女が教授に「この問題児たちは私が面倒を見ます」と言ってくれたのだろう。たしかにぼくらには手綱が必要だったし、とてもよい判断だと思った。だが、ゼミ長は四人グループのぼくらをじぶんたちグループとぼくとなおとの問題児グループにわけて、私たちは別々で成果を発表しましょう、と言った。

これには正直、ぼくは可笑しすぎて笑ってしまった。よくよく考えれば、ぼくがゼミ長でもそうしたかもしれないと思うと、賢い判断だとうなずくしかない。こうしてゼミ長にも見捨てられた(もしくはぼくらのイキりの可能性みたいなのを信じて、新しいモノの創出を期待してくれたのかもしれないが)ぼくらは、二人でがんばろうと夕日に誓った。そしてその後、なおとの姿を(喫煙所以外で)見たものはいなかった。

 

一人だけでグループ発表をすることになったぼくが、どうなったかは言うまでもない。