自分の責任でバイトの子が辞めた話

連絡もなしに来なくなったバイトのその子は、2日たってからようやく店長にだけ連絡をしたらしい。

 

「二年間がんばってきて働いてきて、辞めたくなるときは何度もあって、それでも耐えてきたけど、ここ一ヶ月精神的に耐えられないと思ってしまう人が出てきてもう働けないってなりました」

ということだ。

 

二年間がんばってきた、その期間には僕もずっと一緒だった。仕事のグチとまではいかないまでも、共通する不満はあったから、互いに互いがいい発散場所となっていたと思う。一緒に飲みにいったり、出かけたり、ちょっとした信頼関係は築けているつもりだった。

 

 

ただ、この1ヶ月、たしかに彼女に対してぼくが不満を持っているのは事実だった。

彼女は基本的に謝らない。仕事に対する責任感が欠如しているようにぼくの目には映っている。そこが嫌だった。ミスをすることに憤っているのでも、謝らないことに憤っているのでもなく、ぼくは彼女に、仕事のミスを仕事でカバーしないことに憤っていた。

ただ、責任感を持てと言われて持つ人なんてほとんどいなくて、自分で気づかないと意味のないことなのだから、強くは言いたくなかった。だから、ぼくは茶化すことにした。怒るのでもなく、こうしてほしいと伝えるのでもなく、責任感を持てない彼女を茶化した。それがいけなかったのかもしれない。もしくは、ぼくの考え方が二年前と変わったことに気づいて、もう彼女は一緒に働くのが嫌でたまらなくなってしまったのかもしれない。

 

二年間共に働く中で、認識の違いみたいなのがどんどん大きくなって、互いに共感できなくなって、彼女の中で何かが破裂して、当日に何の連絡もよこさず、ばっくれたのかもしれない。

 

結局、かもしれない、と言わなければいけないほど、何が嫌だったのかを彼女は教えてくれなかった。シフトが被っていたのがぼくばかりだったし、心当たりもぼくしかないので、「精神的に耐えられない人」というのがぼくには違いないのだろうが、それもまた予想でしかない。

 

きもちわるい。と思ってしまう。

二年間も一緒にやってきて、ほかにも話をきいてくれる人はいるのに、誰にも相談できなかった彼女が。何の連絡もなく休み続けた彼女が。それを責めたくなる自分が。それほどまでに彼女を追い込んでしまった自分が。

全部全部、きもちわるい。

 

だから、もう二度と同じようなことをおこしたくない。

たしかに彼女は最後の出勤日、とても暗そうにしていた。ぼくはそれにすぐ気づいて、「具合悪いの?」ときいたけれど、彼女の返事はおざなりだった。その日ぼくは、あまり彼女に関わらないでおこうと思って、放置をしたが、きっとそれは最適解ではなかったのだろう。