世界はうそに満ちている

世界はうそに満ちている。

 

よくわからない感情であふれている。

 

ぼくの腰にも届かない小さな子どもが、高い高い空を見上げて、にへらっと心底幸せそうに笑う。

とうとい。

それだけで、それだけなのに、どんな感情かもわからず、泣きそうになった。

 

 

心とからだが切り離されていく、冷たい感覚。

周りにはたくさん人がいて、じぶんも笑っているはずなのに、急にそんなじぶんの姿を俯瞰して、遠くから見ている気分になる。

 

あ、じぶんって一人じゃん。

ふと気づいた事実に、驚くほど心が静かになった。

 

満たされない気持ち。

よくわからない焦り。

 

人との繋がりが感じられない。

だれのことも信じられなくて、もうぜんぶやめたくなる。

 

うそつき。

 

 

 

white lie
 noun
  1. a harmless or trivial lie, especially one told to avoid hurting someone's feelings.

白い嘘

 名詞

害のない、またはとるにたらないうそ。とくにだれかの気持ちを傷つけないようにつくものを言う。

 

 

 

うそつき。

 

だれのこともすべて信じる必要はなくて、うのみにするのをやめてみる。

人との繋がりは、たまに会ったときとか、ちょっとした言葉とかでふと気づくものだから、常に感じなくてもいい。

 

周りと比べるからこその焦り。

他人では満たされない気持ち。

 

ふと気づいた事実に、驚くほど心が静かになった。

あ、みんな一人じゃん。

 

周りにはたくさんの人がいるけれど、だれだって完璧ではいられなくて、足りない気持ちを感じながら今日も生きている。

心とからだが切り離されていく、冷たい感覚。

 

夏の朝に気持ちいいその冷たさを感じながら、ベランダ越しにみえる高い高い空を見上げて、にへらっと心底幸せそうに笑ってみる。

とうとい。

どんな感情かもわからず、泣きそうになった。

 

よくわからない感情であふれている。

 

世界は優しいうそに満ちている。