雨にも負けず じぶんにも負けず

宮沢りえさんのこの朗読をきいたのは、ぼくがニュージーランドにいるときだった。

 

 

 

その落ち着いた語りと、力強い音楽が、ぼくの心をふるわせた。

言葉が言葉として持つ力。

文字ではなく、言葉の持つ表現力に圧倒されて、頭から離れなくなった。

今あらためて、何年ぶりかにきいてみて、やっぱり心打たれてしまう。

ただ、そのときには気付かなかったことがある。

声や音楽といった音にばかり気をとられ、映像の含んだ意味を見つけようともしていなかった

あらためて。

映像も含めて、この作品をみてみる。

きいてみる。

 

泣いてしまいそうなこの気持ちを、再び思い出す日が来ることを、願ってやまない。

 

雨ニモマケズ
宮澤賢治

 

雨にも負けず

風にも負けず

雪にも夏の暑さにも負けぬ

丈夫なからだをもち

 

慾はなく

決して怒らず

いつも静かに笑っている

 

一日に玄米四合と

味噌と少しの野菜を食べ

あらゆることを

自分を勘定に入れずに

 

よく見聞きし分かり

そして忘れず

野原の松の林の陰の

小さな萱ぶきの小屋にいて

 

東に病気の子供あれば

行って看病してやり

西に疲れた母あれば

行ってその稲の束を負い

 

南に死にそうな人あれば

行ってこわがらなくてもいいといい

北に喧嘩や訴訟があれば

つまらないからやめろといい

 

日照りの時は涙を流し

寒さの夏はおろおろ歩き

みんなにでくのぼーと呼ばれ

褒められもせず

苦にもされず

 

そういうものに

わたしは

なりたい

 

【出典 参考文献 教科書でおぼえた名詩】