人生をより豊かにするたった一つのこと 思い出す喜びの話
一番わかりやすいのは、食べ物なのではないかなあと思う。
たとえば梅干しをみたとき、ぼくらの唾液はとまらなくなる。
すっぱさを思い出すから。
最近、ぼくは少し時間ができると、エア食事をする。
頭の中で食べたいものをイメージして、匂いをかいで、口に含む。
そうすると、めちゃめちゃうまい。
寿司を食べてるじぶんを想像する。
カンパチにしょうゆをつけて、口にいれると、柔らかいシャリと、ぷりぷりのカンパチが絶妙な歯ごたえで、たまらなく美味しい。
熱々の、ズワイガニのトマトクリームパスタ。殻をよけて、フォークで麺を巻いて、口にいれる。美味しいなあ。
という想像をする。
1日出かけて、家に帰って、ふとしたときに、今日食べたものを、頭の中でもう一度食べてみると、その味がとても鮮明に思い出されて、なんか二回も食べてしまったような得した気分。
すぐに思い出そうするのが、とてもよいのだと思う。
寝る1時間前とか、布団に入ってからとか。
その日会った幸せを、もう一度思い出そうと、意識的に頭を動かす。
反省は今しなくていい。
朝起きたときでも、昼歩きながらでもいいけど、夜にやってしまうと、暗闇の魔力に負けて、どんどんネガティブになってしまう。
だから、寝る前は幸せを思い出す。
今日あいつと話せて楽しかったなあ。ご飯がすごく美味しかったなあ。ばかみたいに笑って、こんなくだらない話をしていたなあって。
あの日楽しかったなあ、ってぼくが言うと、けいのさん(仮名)に、
「たけぴ毎回楽しかったって言うじゃん」
って言われるのだけれど、楽しかったのだからしょうがない。
楽しかったところを思い出して、あぁやっぱり楽しかったなあと言葉にすると、余計楽しくなるのだから、言わなければ損だ。
ぼくは写真を撮る。それはきれいなものとか、だれかの心を動かすものではなくて、じぶんの幸せを思い出すためのものだ。
過去を振り返っても仕方ないとか、そんなことはないのだと思う。
あぁ、幸せだなあ、と記憶を噛みしめて、何度も味わって、今日もがんばろうと思えるのが、とても豊かなのだと思う。
昨日を大切にする。
それは今日を大切にしようとするために、必要な行為なのだと、ぼくは思っている。
今日の幸せを一つ、思い出す。
幸せなんて大層なものがないなら、ちょっとすてきなことだっていい。
友だちがじぶんのつまらないギャグで笑ってくれたことでも、洋服を褒めてくれたことでも、知人にあいさつされたことでも、店員が愛想よかったことでも、可愛い子やイケメンとすれ違ったことでも。
そのすてきを噛みしめながら、思い出して、いいなあと思う時間をつくれば、人生は二倍すてきになるのだと思う。