物語

僕と逃げると、

「なんで追いかけてくんのよぇ」 舌がもつれた。息が苦しくなって、小刻みに酸素を求める。走ってる最中に叫ぶべきではなかった。そんな後悔をする。「僕が何をしたっていうんだぁはっ」 だというのにまた叫んでいた。抗議をしないではいられなかったのだ。…

彼女と愛とスカート

「好きになった」 薫子の目はとても真剣で、冗談を口にしているようではなかった。すごい、と素直に思う。彼女はいつだって、こうなることができるのだから。 「何を?」 この一言を言うためだけに、私はここに来たのだと、深く実感した。私がこぼすことので…

僕と愛とスカート

アパートの階段の一番下、制服姿のまま僕は腰をおろす。夕焼けの空は夜色と混じり合い、不思議な感じがした。ローファーが地面を蹴る、硬い音。同じ中学の制服をきた泉ちゃんは僕を一瞥して、階段をあがりはじめる。 「ふられた」 呟いた僕の背中に泉ちゃん…

まなつのらん

アイラン 生き苦しさをおぼえる。積み重ねた石が落っこちて、私の足にあたる。もっともっと、高く積まなければ。この青い空に、届かせなければ。そう、思った。追いたてられるように、また走りだす。 とても暑い日だった。陽は地面を突きさして、かげろうが…